冷徹貴公子は嫌な奴

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「これ、お願いします」 店員の人にCDを渡し、チラリと成瀬さんを見ると、沢山の人に囲まれながら、悔しそうに俺を睨んでいた。 伊達に、強い個性の人間に囲まれてる訳じゃないぞ。 俺だって、やる時はやるんだからな。 勝ち誇った笑みを浮かべて、ざまあみろと言わんばかりに舌を出してやった。 「おい!待て!」 店を出て歩いていると、暫くして後ろの方から声を掛けられた。 あの声は、嫌味なピアノの貴公子とやらの声だ。 「待てと言っているだろう!聞こえないのか、君の耳は!」 聞こえてるけど、関わりたくない。 何で、追い掛けて来るんだ、この人。 歩調を緩める事なく歩き続けていると、前に回り込まれて、道を塞がれた。 「……何ですか?」 不機嫌丸出しで、ジトリと睨んでみせると、先程とは違って、何やらバツが悪そうな顔で見てくる。 「……倍の値段を払う」 ……………はい? 言っている意味が分からなくて、ハテナマークを飛ばしながら、相手の顔をマジマジと眺める。 「君が出した金額の、倍を払うから、それを渡せと言っているんだ。君の頭は機能していないのか?」
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