冷徹貴公子は嫌な奴

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そうまでして、俺から音楽を奪い取る権利なんて、誰にも無い筈だ。 「……放せよ」 肩を掴んでいる手を勢い良く払うと、そのまま背中を向けて歩き出す。 あーー!!ムカつく!! 買うなとか、渡せとか、アッタマおかしいんじゃねーの! ズンズンと歩いていると、後ろからコツコツと革靴の足音が聞こえてきた。 「おい、君。おい、そこの、犬…いや、待ってくれ」 ………今、犬っつったよな? 犬って呼んだよな、犬って。 「おい!待てと言っているだろう!」 追い付いて来た成瀬さんは、何を思ったのか、突然、俺の手首を捕まえてきた。 「ちょっ!何!?」 「いいから、ついて来い」 それだけ言うと、俺を引き摺るようにして、そのまま歩いて行こうとする。 「は?全然、意味分かんないんですけど!?」 そんな俺の抗議も抵抗も虚しく、力で敵わないこの人に、そのままズルズルと引き摺られて行ってしまった……。 「さあ、選べ」 「…………」 どういう訳か、二人してテーブルを挟んで向かい合うっていう、このシュールな現状…。 引き摺られるようにして連れて来られたのは、超が付く高級ホテルの中にある、これまた高級感漂う喫茶店だった。
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