冷徹貴公子は嫌な奴

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目の前には、この店のメニューが広げられていて、成瀬さんは踏ん反り返らんばかりの様子で俺を見ている。 いや、選べって言われても……。 チラリと周囲を見渡せば、スーツ姿の男性や、お洒落な上品なワンピースを着た女性ばかりで、どう見ても、大学帰りの俺みたいなガキが来るような場所じゃない。 ハッキリ言って、俺だけ浮いてる。 「……いや、この状況…理解不能なんですけど…」 そう言った俺に、成瀬さんはハテナマークを頭の上に浮かべる。 「何を言っているんだ、君は。お詫びも兼ねて、奢ってやるから、好きなものを選べと言っている。そんな事も分からないのか」 いやいやいや。 分かんねーよ、普通。 あんた、何も言わずに拉致っただけじゃん。 察しろ精神、ハンパないな。 「お詫びするとも、しろとも、言われてませんし、言ってませんけど?」 呆れたように言うと、若干、成瀬さんの表情に焦りが見えた。 「い、いま言っただろう。ほら、好きな物を選べ」 お詫びのつもりにしては、上から目線が満載だな。 ………まあ、いいか。 ここは、大人しく奢られておこう。 そうしないと、また面倒そうだし…この人、しつこいし……。
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