冷徹貴公子は嫌な奴

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諦めて、目の前のメニューを手に取る。 「!!!?」 メニューに目を通して、その値段の高さに驚いた。 は!? 珈琲一杯が千円から!? たかが珈琲で!? ペラペラと捲っていくと、とんでもない値段のオンパレードで、思わずメニューを閉じてしまった。 「決まったか?」 「……水でいいです」 「は?」 「水でいいです」 こんな値段のものを口にしても、きっと落ち着かない。 「お詫びだと言っているだろう。選んでもらわないと、俺が困る」 そんな押し付けがましい『お詫び』なんて、熨斗つけて返してしまいたい。 「いえ、本当に水で」 すると、成瀬さんは溜息をついて、俺の前に置いてあるメニューを手に取り、近くで待機していたウエイトレスの人を呼んだ。 「カーボベルデ ナチュラルのホット珈琲を二つ。それと……」 注文をしていた成瀬さんが、中断をして俺を見た。 「君は、甘い方が好みか?」 「へ?あ、はい、まあ、どちらかといえば…」 きっと、珈琲の事を言っているんだろうと思った。 「それじゃ、適当にケーキを幾つか見繕ってくれ」 …のは、どうやら勘違いだったらしい。
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