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いや、だからって、月山薫のピアノを貶した事を、無かった事にはしないけど。
チャラにするなんて、そんな事は出来ないし、しない。
「………参考にしているだけだ」
そう言われても、もう言い訳にしか見えない。
「お待たせ致しました。カーボベルデ ナチュラルのホット珈琲になります」
ワゴンを押して来たウエイトレスの人が、俺と成瀬さんの前に、それぞれ珈琲を置く。
「こちら、三種のベリータルトアイス添えになります」
「彼の方へ」
成瀬さんに言われたウエイトレスが、俺の前に、そのベリー何とかを置いた。
「こちら、クーベルチュールチョコレートのガトーショコラオレンジソース添えです」
「彼の方に」
………ん?
「こちら、宇治抹茶のチーズケーキ小倉クリーム添えです」
「それも彼で」
まさか、このパターンは……。
「こちら、季節のフルーツミルクレープです」
「全部、彼で」
「以上になります」
上品な笑みを浮かべたウエイトレスは、革製品のカバーのような高級感漂う伝票を置いて、ワゴンを押して離れて行った。
「さあ、好きなだけ食べるといい」
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