冷徹貴公子は嫌な奴

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「そういう訳にはいかないだろう」 「いえ、本当に。さっき奢ってもらった分で、十分です」 軽く、CDの三倍の値段はしてたと思う。 それなのにCDの代金までなんて、とても受け取れない。 「だが、あれは君への謝罪だ」 「成瀬さん。謝罪って、物でする事じゃないですよ」 そう返すと、成瀬さんは驚いた顔をした。 「そりゃ、謝罪の気持ちっていうのは伝わりましたけど、本当の謝罪って、口に出して謝る事だと思うんです」 そう。 『ごめんなさい』って言葉で、俺はいいと思う。 いくら物を与えられても、そこに『言葉』や『気持ち』がなかったら、そんなの何の意味も無い。 「一言、『ごめんなさい』、『すまなかった』って言ってもらえる方が、俺は、何かを渡されるより、ずっと嬉しいです」 そう言った俺を、成瀬さんは不思議そうな表情で見てくる。 「君は……随分と変わっているな」 暫くして、ようやく成瀬さんが言ったのは、それだった。 「そう…ですか?普通だと思うんですけど…」 普通…だよな? いや、俺の周りが個性的すぎて、気が付いてないだけか? もしかして、俺も、あの人達に染まってるとか?
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