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*桜庭奏の正体*3*
「ちょっと来い」
二人して、楽屋を出た後すぐ。
成瀬さんは、俺の手首を掴んで、それだけ言うとスタスタと歩き出した。
いつかのように、引き摺られる俺。
楽屋からロビーへと繋がる通路を通り抜けた成瀬さんは、ロビーに出るなり、俺の手を離した。
「どういう事か、説明してもらおうか?君が、桜庭征一郎のむ…」
「わーー!わー!!」
コンサート終了後とはいえ、ロビーにはまだ観客が残っている。
慌てて成瀬さんの口を手で塞ぐと、そんな俺を訝しげに成瀬さんが見る。
気が付けば、徐々に集り出す視線。
そうだ……よくよく考えれば、この人だって相当な有名人だった…。
このまま目立つのは避けたい。
瞬時に判断して、今度は反対に俺が成瀬さんの手首を掴んだ。
「ちょっと、いいですか」
それだけ言うと、成瀬さんを引っ張って、コンサート会場の外へと出る。
人の目を避けたい俺は、会場近くにあった公園まで成瀬さんを引っ張って歩いた。
周囲を確認して、人気が無い事を確認すると、手を離して手近なベンチに座った。
黙ってついて来てくれた成瀬さんは、不機嫌そうな顔で俺を見下ろす。
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