冷徹貴公子の依頼

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ドキリと胸が高鳴る。 恋人になってから、今まで見た事のない表情を、月山薫は沢山見せるようになった。 さっきの微笑みなんかもそうだ。 一瞬しか見せない表情に、情けなくも、俺は翻弄されっぱなしだったりする。 カウンター席に着くと、中から村沢さんが声を掛けてくれた。 「いらっしゃい。ご注文は?」 「こんばんは。オレンジジュース、お願いします」 注文を受けた村沢さんは、カウンターの奥へと移動して行く。 その後ろ姿を見送り、演奏している月山薫を見つめた。 ………どう切り出すかな…。 どう転んでも、結果は同じように思える。 それなら、いっそ潔く言ってしまった方がいいんだろうか。 ……けどなぁ……。 胃が重い……。 これから伝えないといけない内容を思って、深い溜め息をついた。 「……あ?」 地を這うような、デスボイス…。 演奏を終え、話し掛けてくる客達との会話を済ませた月山薫は、いつものように俺の隣のカウンター席に座った。 暫くたわいない話をして、機嫌の良さそうな月山薫を確認した俺は、意を決して、本題に踏み切った。 そして、その結果が、さっきのデスボイスだ。
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