冷徹貴公子は嫌な奴

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*冷徹貴公子は嫌な奴・1* 「誕生日、おめでとう!」 村沢(むらさわ)さんの掛け声に、一斉にクラッカーが鳴り響いた。 『Hiding place(隠れ家)』。 月山薫の幼馴染みである村沢優(むらさわ すぐる)さんがオーナーを務めるジャズバー。 月山薫がよく演奏する店だ。 そこで、店に入った途端、いつものメンバーがクラッカーを手に待ち構えていたという訳だ。 今日、四月二十五日は、俺の二十回目の誕生日。 何も知らされていなかった俺は、サプライズに目を丸くして驚いた。 「ほらほら、そんな所に立ってないで、こっちにおいで」 カウンターの中にいる村沢さんの声に迎えられ、他の従業員の人や、顔なじみのお客さん達が、俺を奥の席へと誘導していく。 「え?何?これって、どういう?」 今一つ状況を飲み込めていない俺は、困惑しながら、連れて行かれるがままに奥の方へと歩いて行く。 すると、大きくて艶やかな黒いグランドピアノの前に置いてあるテーブルの上に、大きなバースデーケーキが用意され、二十本のロウソクが、柔らかい光を灯して揺れていた。 そして、そのピアノの椅子には、微笑みながら俺を見る、月山薫が座っている。
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