冷徹貴公子の依頼

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「俺だって、ちゃんとあいつの話を聞くつもりだったんです。それから、どうするか返事しようと思ってたのに……それなのに…」 そう。 返事は保留にしてある。 成瀬さんも、返事は急がないって言ってくれたし、俺も、ちゃんと月山薫と話をしてから答えを出そうって思ってたんだ。 それなのに、いざ話し合おうとしたら、結果がこれだ。 いや、ケンカ腰になった俺も悪いけど、まともに話をしようとしなかった月山薫にも問題があると思う……多分。 「薫の悪い癖だよね。地雷踏まれたら、直ぐにキレるの。ホント、大人気ないよねー、そういうところ」 ………この人に言われると、なんだか複雑な心境になるのは、俺だけだろうか。 「前に言った事、覚えてるかな?薫がクラシックピアノをやめた理由」 いきなり聞かれて、慌てて記憶を辿る。 「えっと、『この人に嫌わらたら、この世界で生きていけない大物っていう人に、思い切り嫌われたから』ですよね?」 「そう、それ。その大物っていうのがね、成瀬の師匠なんだよね」 ……………。 「え……?」 月山薫の、クラシックの道を閉ざした人が……成瀬さんの…師匠?
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