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そうして、成瀬さんの隣に腰を下ろす。
それを確認した成瀬さんは、神妙な顔つきで口を開いた。
「……ここには、俺の母親がいる」
「…………え?」
衝撃的な話の切り出しに、思わず声を失う。
母親?
「俺は、今の両親に引き取られた養子だ。ここには、生みの親がいるんだ」
「…………」
何て返せばいいのか、分からなかった。
まるでテレビか本のような話だと、頭の片隅で思ったりもしたけど、成瀬さんの真剣な表情から、そんな馬鹿な考えは直ぐに消えた。
「俺自身、高校生になって、両親から聞かされるまでは知らなかったんだ。父親の事は分からないが、母親がここにいる事は教えてもらった……一度も会いに来た事はなかったけどな」
そう言った成瀬さんの表情は、心なしか少し寂しそうに見えた。
「どうして、会いに行かなかったんですか?」
「俺を育ててくれた両親には、心から感謝している。だから、心配は掛けたくなかった。特に、母さんには」
成瀬さんの表情から、育ててくれたご両親の事が、本当に好きなんだなっと思った。
「……それでも、生みの親に会いたくなかった訳じゃない。いつか……何かの形で会いに行ければと…ずっと思っていた」
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