冷徹貴公子の依頼

18/24
前へ
/550ページ
次へ
「そんな事はない。君以外、考えられないから、君に仕事を頼んだんだ」 「……でも、自信がないっていうか」 「君は、もっと自分に自信を持つべきだ。君の才能は、俺が保証している」 「……監修なんて、やった事ないですし」 「誰にでも、最初はある」 「……」 次々と逃げ道を塞がれて、もう返す言葉が見つからない…。 しかも、俺の心情なんて、全然気付いてない…。 その上……。 「君なら、大丈夫だ」 なんて、逆に励まされてるし……。 優しい笑顔を向けられて、どうすればいいのか、必死に頭の中で考える。 断って、月山薫に謝る。 断って、月山薫に謝る。 断って、月山薫に謝る。 当初の予定を念仏のように心の中で唱え、頷きそうになるのを、ギリギリ我慢する。 さあ! ここで断るんだ! 大切な演奏会なんだ。 俺じゃない方が、結果的には成瀬さんにとっても良い筈だ。 月山薫とだって、仲直りするって決めただろ。 それに、ほら、あれだ。 この人の師匠は、月山薫をクラシック界から追放したんだ。 それを忘れるな、俺! 「あ、あの!!」
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加