冷徹貴公子の依頼

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意外な言葉に、じっーっと月山薫を見つめる。 「もう、口出ししねえよ。応援なんぞもしねえけどな」 本当は、反対なんだ。 眉間のシワが、いい証拠だ。 それでも、俺の事を思って、俺の判断を尊重してくれてる。 そんな月山薫の優しさに、ジーンときた。 「けど、なんかあったら、直ぐに言え」 応援しないなんて言っておきながら、こうして逃げ道は用意してくれるんだ。 本当、こいつの、こういう所ってズルい……。 「うん、分かった」 「後、一つだけ」 そう付け加えた月山薫は、身体の向きをこっちに動かして、真っ直ぐに俺を見つめる。 その真剣な表情に、思わず緊張してしまい、背中をピンと伸ばした。 「お前の恋人は、誰だ?」 「は?」 突然の質問に、面食らった俺は、月山薫の真意を探るように、その顔をまじまじと見てしまう。 「……そんなの、あんたに決まってんじゃん」 何の確認? 今更な質問をされて、頭の上にハテナマークを浮かべていると、頭を月山薫に乱暴に撫でられた。 「ちょっ…!?」 「それ、忘れんじゃねえぞ」 忘れるも何も、事実そうなんだから、忘れようがないだろ。
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