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「夢みたい」な日々は、一週間を超えても現実味を帯びず、相変わらず、フワフワした気持ちで過ぎていった。
それは、あんまり伊坂君と、実のある話をしていないことに起因すると思われる。
「昨日も話したっけ、楢崎がね、『小学校の同窓会がしたい』って、まだ言ってんの。小学校の同級生って、中学でも一緒だったんだから、おかしな話だよねー」と、電車内で、私は努めて明るく言った
「でも良いんじゃないかな? 中学卒業して1年経ったし」と、伊坂君はそつなく返答する。
「そんなこと言っちゃうと、本当に開催しそうな勢いだよ。今度のゴールデンウィークにでも。すぐにね」
「小学校か、懐かしいな……」
そう言って、伊坂君は遠い目をした。
この一週間で気づいたが、伊坂君は、こんな風に目を細めることが多い。なにか、癖なのかもしれない。眩しいものでも見るように。霞がかった、その向こうを見ようとするように。
そして、その後は決まって少しの沈黙が訪れる。それが、私にはとても苦しいことだった。
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