第二章

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心配していた岩村はこの連絡に驚き、とるものもとりあえず、野田と内田に連絡をとり仕事帰りに吉良のマンションに向かったのである。 吉良のマンションは本郷三丁目にあるタワーマンションだ。 岩村達は何度か訪れたことはあるが独身の吉良には広すぎる部屋であった。 「相談事ってなんだろう。」 野田が言った。 野田は大分の出身で九州男子とは思えない小柄で細身の秀麗な美男子だ。 どちらかというと慎重な性格で、仕事はかっちりこなすのだが、やや積極性が足りないところがある。 情に厚いタイプで吉良のことも心配して何度となく連絡をしていた。もっとも吉良から返信があることはなかったが。 「辞めるってことじゃないのかな。」 内田が野田に言葉を返した。 内田はアメリカ人の母と日本人の父を持つハーフだ。 彫りの深い顔立ちと浅黒い肌に青い瞳。 こちらは野田と逆で積極的で行動的なのだが、そのぶん仕事が粗いのが玉に瑕だ。 「辞めるてことなら、俺たちに相談はしないさ。吉良はそういう奴だ。もっと深い何かがあるに違いない。」 岩村はきっぱりと言った。 岩村は大阪出身で、明るく社交的で頭の回転もいい。 もし吉良が同期にいなかったら間違いなく岩村が同期の出世頭になっただろうと言われている。 しかし、岩村は吉良ほどの鋭い分析力も決断力もなかった。どちらかというと周りの評価を気にしすぎるところが岩村の問題点である。 3人に共通しているのは今どきの若者には珍しいくらい他人思いの優しい性格であることだ。 3人は一種の緊張感に包まれながら、吉良のマンションの前にたどり着いた。 仕事が遅く終わったので時刻は22時を過ぎていた。 image=488126309.jpg
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