軋む助手席

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こんなチャンス二度とないかもしれないのに。 まだ離れたくないのに。 せっかく二人きりになれたのに。 でも、私はもう社内恋愛なんてしないって決めたんだ。 部長との距離を縮めるべきじゃない。 仮に私が縮めたいと思っても、部長は女子社員から憧れの存在で、地味な私なんか相手にされるわけがない。 「いえ、何でもないです。ありがとうございました」  部長から視線を外し、急いでシートベルトを外した。 するとその時、窓硝子が光り、そのすぐ後に大きな雷音が鳴り響いた。 「きゃっ」 思わず部長の胸に顔を寄せ、スーツジャケットを握りしめていた。 ふわりと香水の匂いが鼻腔を掠める。 雷音が止み、冷静さを取り戻すと、なんてことをしてしまったんだと青ざめた。 思わず抱きついてしまった。 それも上司に。
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