第一章

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顔を上げ、さっきの生徒を確認すると、一人の小太りのオッサンに声をかけられていた。 おいおい…。 見失わないように急ぎ足で傍による。 あの子、名前何だったかな。 「おい。」 声をかけると、オッサンか小さく肩を震わせ、女子は優雅に振り返った。 思い出した。 今年から転校してきた有名人。 文武両道、容姿端麗、頭脳明晰、品行方正、才色兼備そんな感じの女子。 名前は確か『尭無結那(タカナシユイナ)』。 俺は彼女の授業持ったことないから、話すのは初めてだ。 「あら、鴻上先生。」 「せ、先生?」 男は目をキョロキョロと忙しなく動かして落ち着きがない。 それに比べると女子の落ち着き用には異常さを感じる。 てか、よく俺の名前知ってんな。 「おじ様、また今度にいたしましょう。 今日はごめんなさい。」 俺を無視してオッサンに話かける尭無。 コクコクト頷き走り去って行くオッサン。 だからさぁ、 「教師の俺の前で堂々とそういうのやめてくんない?」 「先生ごめんなさい。」 少しも詫びている気がしない。 ふふ、と笑って謝罪の言葉を口にした。
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