4人が本棚に入れています
本棚に追加
森を出てから少し歩いて。
ずっとずっと先まで続く、灰色の砂地。
見渡す限り草も花も色もない景色なのに、不思議と寂しいとか悲しいとか、暗い気持ちにはならなかった。
辺りは既に暗くなり始めていた。
『星は月のない夜にしか実をつけない。無月夜は一年に一度だけ』
蟹の住処では時計も走る。
少し余裕を持って出発したのに、もたもたしていたら夜が明けてしまいそうで。
「急がなくちゃ」
遠く遠く、ぼんやり震える大きな影。
きっと、あれが。
最初のコメントを投稿しよう!