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すうーっと…
麻美の香りがして、感覚が蘇る。
しびれたような…どこかにしまい込んでた熱い想い。
産まれる。
改めて聞くと、感動にかわる…言葉。
涙が驚くほど溢れてきて…
言葉にならない。
「ちょ…聞いてるか?
すぐに来い!
先に破水したとかで危ないらしい。
あんたの名前を呼んでるんだよ!」
感動が一瞬で吹き飛ぶ。
危ないって?
何が?
まさか、麻美がとか言わないよな…
子供でもダメだ。
俺を呼んでる…
「どこに行けばいいのか教えてくれ。
すぐに行く!」
すぐに行く。飛んでいく。
待ってて…
「あ、はい…」
というのは俺にじゃないらしい。
電話の向こうで慌ただしく何かを話して動いてる感じが余計に不安を増殖させて…
「場所は百合に聞いてくれ。
百合も連れて帰って来いよ?」
「百合?誰です?
私はそんな人…」
「あんた、自分の店で働いてる女の名前も知らないのか。
間宮百合亜。
病院に入ってると伝えてくれ。
さっき電話をしたが出ないから。
いいか?
百合も連れて帰って来いよ!」
そう言って電話が切れた…
間宮百合亜…
頭の中を回転させる。
本名はほとんど覚えてない。
あ、ジュリアさんか…
彼女が知ってたのか!
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