第10章~ひな祭りに~(冬の華編)

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…‥しかし、ユキは二つ返事で喰らいつこうとはせず「脱がし合い出来たら、しよ?」と、耳元で甘く囁き、先に脱がせるようにと指示をしてきた為、陽菜は戸惑いながら彼のブラウスの前ボタンを一つ外し、襟を僅かに開く。すると彼も自分の背中に腕をやり、ファスナーをボタン一つ分程下げてくる。 【…‥】 「まだ途中だけど?」 これを五回も続けると、もう陽菜の手は停止して、どうしようにも動かせなくなってしまったが仕方が無い。と、云うのも、とても綺麗で、細くて、長くて、なんと云うか色っぽい手に背中のファスナーを少しずつ下ろされているのだ。しかも、そうされる度に鎖骨や肩が好きなひとの目前に曝される。こういう状態に耐え抜いて最後の最後まで脱がし合いを続けるなんて、そんなコト、いくらなんでもまだ出来ない! 【‥まって…‥っ…待って!】 自分から誘ったくせに、陽菜は、なんだか急にとても怖くなってきて、無意識にブラウスに掛けていたなめらかな陶器色の指先を離すと両腕を肩に交差させて震えたが、自分でも自分が何故震えているのか?全く分からない。 「怖いんだ?」 【‥‥わ…分からない…】  分からない…。ユキが気遣って聞いてくれてるのに、何も分からない。どうしよう!?と困っていたら、フワリ‥。と抱き寄せてくれて、黄金の長い金糸の髪を、肩を優しく撫でつけて包んでくれて、 「ううん。陽菜は、怖がってるよ。」 と怒らずに悟してくれて、秘密を教えてくれた。 「本当は…僕だって怖い!」
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