『見知らぬ生徒』

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 「二人とも、熱中症で気を失う寸前でした。そうしたら、あいつ、水が飲みたいと言って、屋上の端に向かって歩き出して・・・。 止めようと思ったんですが、間に合いませんでした・・・」  S高校で発生した、屋上からの生徒の転落事故。  一緒にいた生徒の話を聞く限りでは、熱中症で意識が朦朧となったことによる事故と考えられる。  「誰だ、この子?」  高層マンションの屋上の監視カメラからの映像を見ていた刑事が、モニターの右下を指さして言った。  あの時、S高校内にいたのは2人のはずだ。だが、映像には確かに3人の生徒が写っている。  刑事と一緒にモニターを見ている、S高校の年配の教師が言う―  「この子、うち学校の生徒ではありませんよ。うちは男子校ですから」    よく見ると、顔はよく分からないが、セーラー服姿の女子生徒が、校舎の南側の犬走りに立って、屋上を見上げている。 彼女の髪には、赤い血のようなものが付着していた。
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