第1章

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「よう」 カウンターの近くの席に、彼女が本を読んでいた。 「こんにちは」 彼女はそれだけ言って、本に目線を戻した。 気にせずに図書館の奥に行き、 本を探しに行く。 数分後、本を借りて席につく。 同時に彼女が本を閉じた。 「なに読んでたんだ?」 「この前最後の方に話していたの」 「ああ、あの医者が主人公の推理小説か。どこまでいった?」 「まだ、三件目の殺人事件」 読んでいない本は触りだけしか話さない。 二人とも読んだら感想を言い合う。 そんないつもの会話。 「それより、前回薦めたの読んだ?」 「読んだけど、どうも終わりが気に入らないな」 「やっぱり、主人公がヒロインの全てを受け入れるとこ?」 「そこ。ヒロインが明らかにやりすぎなのに、主人公が受け入れるのはおかしいと思う」 「そう」 彼女の目の色が少しだけ変わった気がした。 「狂おしいほど愛されるのは嫌い?」 「そこは嫌いじゃないけど、主人公の性格の問題だな」 「主人公のほう?」 「ああ。あんなにチャラチャラした性格なのに、すぐに受け入れるのが気に入らない。もっと固い男だったら良い終わり方なんだけど」 「そう」
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