第1章

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「もういい時間だな。帰るか」 1時間ほど話して帰ることにした。 別れの言葉を言い出す前、なんとなく、来る前のことを思い出した。 「あのさ」 そこまで言いかけて口をつぐむ。 「なに?」 黙っている俺に疑問を覚えたのか、先を促す。 「いや、なんでもない」 「そう」 「じゃあ、またな」 「ええ、また」 彼女は本に戻り、俺は図書館を出る。 少し暗くなった道を歩きながら考える。 俺は彼女とどうなりたいのか。 彼女に好意を持ってはいるが、彼女を知ろうと思っても二の足を踏んでしまう。 好意を持っているなら、知りたいと思うのは普通だろう。 にもかかわらず、こんなことをしてしまう。 理由はわかっている。 「臆病者なだけなんだよ」 一人言がむなしく響く。 上には星空が広がっている。 明日は晴れか。 よし。 明日も行こう。 少し寒い帰り道をゆっくりと歩いた。
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