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「もういい時間だな。帰るか」
1時間ほど話して帰ることにした。
別れの言葉を言い出す前、なんとなく、来る前のことを思い出した。
「あのさ」
そこまで言いかけて口をつぐむ。
「なに?」
黙っている俺に疑問を覚えたのか、先を促す。
「いや、なんでもない」
「そう」
「じゃあ、またな」
「ええ、また」
彼女は本に戻り、俺は図書館を出る。
少し暗くなった道を歩きながら考える。
俺は彼女とどうなりたいのか。
彼女に好意を持ってはいるが、彼女を知ろうと思っても二の足を踏んでしまう。
好意を持っているなら、知りたいと思うのは普通だろう。
にもかかわらず、こんなことをしてしまう。
理由はわかっている。
「臆病者なだけなんだよ」
一人言がむなしく響く。
上には星空が広がっている。
明日は晴れか。
よし。
明日も行こう。
少し寒い帰り道をゆっくりと歩いた。
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