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ちょうど色んなモノを洗い終えた後だった。
先生が帰ってきたのは。
「おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
見つめた視線のぶつかるところで、キスを強請(ネダル)る僕に、何一つ惜しむことなくそれを与えてくれる。
身体の奥で燃焼中のものがムワリと炎を上げた。
夥しいほどシたのになんて強欲なんだろう。
枯れることのない泉、というのはこういうことをいうんだろうか。
僕の考えなんて隅から隅までお見通しの先生のことだ、この妖しく艶(ツヤ)った微笑みも僕を誑(タブラ)かす手練のひとつだ。
「和泉、出掛ける用意できてる?」
「ああ、はい、キララから聞きました。
でも、どこ行くんですか?」
先生はまた一層の妖しさを振りまいただけで
何も言わなかった。
人差し指に引っ掛けた車のキーをクルクルと回すと
「じゃあ、行こう」
そんなふうに簡単に僕を促す。
まあ、いつもの事だ。こうやって連れていかれたショッピングセンターでバカほどのワインを連れて帰ってきたこともあるし
ビーチでのBBQパーティに参加したことだってある。
スマホと財布をポケットにしまい込み、家の鍵をかける。
先生の車に乗るのは久しぶりだった。有難いことに3人がそれぞれに通勤に必要な車を持っていたおかげでそのストレスに蝕まれることはない。
ドアを開けると、先生の匂いが僕を誘惑する。直接手を出されている訳じゃないのにこうして僕を脅迫してくるんだ。
まったく、たまったもんじゃない。
極々小さく呟いてまったく気にしていないように車のドアを閉めた。
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