第4章

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大学の研究室で何をするかというと、有機合成化学を基に、沢山の化合物を合成して生活に貢献することを目的とした研究をしている。……そんななんや、かんや。 ここでも先生と顔を合わせている僕は、本当に何も言い様のないくらいに幸せだというしか他ならない。 だって、そうでしょ? 想ってる人と一緒にいられるんだ。そして、好きな事について深くまで語り合えるんだ。 帰る場所まで同じなんだから何も問題はないはず。 「おはよう、和泉くん」 「あ、千恵さん、おはようございます」 「いいねぇ、若いって、何か、お肌艶ッツヤじゃない?」 千恵さんは僕より5歳歳上のお姉さん研究者。 今年博士論文を提出して、それが上手く評価されれば晴れてドクターの称号を手にする事になる。 そんな千恵さんは本の森から数札の書物を抜き出して、僕の横に座った。 「おはよー、門倉くん!」 「おはよう、梅田さん」 そして、僕の同期、梅田さん。彼女は別の大学からワザワザ入試を経てこの研究室へ席を置く今どきの女の子。僕はちょっと前まではこの手の女子が苦手だった。 派手目なキラキラした髪色。 もっさり生えている睫毛。 そしてちょっとキツすぎるフレグランス。 いつもカップにべったり付くリップ。 どれもがあまり好ましくなくて 敬遠していたが、今となってはあまり苦にもならない。なぜか。 もう、基本的に女性に対して興味が無くなってしまったからだ。
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