15668人が本棚に入れています
本棚に追加
/562ページ
突拍子もない発言だな。どうしてそうなるんだ。だいたい泊まりにきて、どこで寝るのさ。
「朝イチから素敵な先生に会えるしぃー」
ルンルン気分って言うの?こういうの。漫画の世界なら沢山の花と音符が彼女の後ろに飛び交っている筈だ。
「ね?門倉君!」
腕に縋り付き、それを揺する。構図はまるで彼氏に我が儘を言う彼女みたいだけど、全くもってそういった関係なんかじゃない。
「梅田さん、ダメですよ」
低く甘さを含んだ先生の声が、梅田さんの揺れを止める。
「えー、どうしてですかぁ?」
明らかな不快感を露に先生を見た梅田さんはブゥと頬を膨らませた。
「門倉君の部屋、今日は誰かがいらっしゃった様でした」
まさか
先生がそんな事を暴露するなんて……思いもよらず。
クスクス、と楽しそうに笑う先生は呑気に机の上を片付けていて。そして、その直ぐ下の床に目を落として更に、爆弾発言。
「あぁ、なんのシミかな、ここ」
靴裏でソコを擦りながら、顔を上げた。
ゆっくりと呼吸をしてせっかく整ってきた脈拍は予想に反してまたグン、とさっきの最高点を振りきるくらいに駆け上がった。
「和泉君、誰か泊めたの??」
「えー、彼女いるんだーーー、残念っ!」
こうなる事は分かる筈でしょ、先生!余り浮いた話も無い僕が部屋に誰かといた、なんて言ったら聞いてくるのは目に見えてるじゃない。
「なんだぁ、つまんない!」
梅田さんが不機嫌になる。それは僕のせいじゃないんだけど、どうしてか居心地が悪くて。
「和泉君、いつの間に彼女いたの」
「え」
千恵さんの手が今度はピタリと止まっていて、右手に関しては握っていたペンをぽん、と開いた本の上に置いている。
「門倉君、酷い」
梅田さんにおいては完璧に八つ当たりだ。
最初のコメントを投稿しよう!