15677人が本棚に入れています
本棚に追加
もう、決めたんだ。
哲ちゃんに伝えた時は揺るがない覚悟だった。哲ちゃんは顔色も声色も変えずにただ、そうか、と言っただけだった。
親にもまだ伝えてはいない事を、一番先に哲ちゃんに言ったのには、理由があった。
哲ちゃんは僕を甘やかさない。
いつも厳しいセリフを投げてくれる。
だから。
「のたれ死にすっかもな」
「うん、それも、いい経験だよ」
つい先日、ボロボロになって帰ってきた僕に一言も追求しなかった哲ちゃん。ただ、連絡くらいしろ、とそう言って何も深くは追わないでいてくれた。
この人は、僕をどうにでもできるのに、ただの一度もどうにもしなかった。
だから、やっぱり哲ちゃんは僕にとったら哲ちゃんのままだったんだ。
「あー、無理やりでもヤッとけばよかった」
哲ちゃんは笑いながらそう言う。
「そしたら、全部シャットアウトしてやれたのに」
僕の頭に手を伸ばすと、髪と髪の間に指を滑らせた。
もう、すっかりこうされる事に抵抗もなく、その後に続く事だってすんなり受け入れられる。
「哲ちゃん」
「お前ね、ちょっとは抵抗しろょ」
そんな風に軽く否定を促しながらも、哲ちゃんだって止めようとはしないじゃない。
タバコの味がするようになった、哲ちゃんとのキス。
哲ちゃんは今でもサッカー?フットサルだっけ?まぁ、スポーツマンでタバコなんて大の嫌い、だったのに
ここ最近のキスは、ずっとタバコの味がする。
「まぁ、もう、お前にぶち込みたいとは思わなくなったけど」
「……そうなんだ」
「別のところで発散してる」
「……うん、なんとなく知ってる」
「そうか」
最初のコメントを投稿しよう!