最終章

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サンフランシスコは年中観光客で賑わう街だ。 ツイン・ピークス、ゴールデンゲートブリッジは当たり前 さらに“セグウェイ”での市内めぐりは大人気観光のひとつだ。 そんなツアーの一行を見ながら車は北へと進んでいく。 「先生、大学は大丈夫なんですか」 「問題ないよ。 もともと、今日は早上がりの予定だったんだ」 「へ」 サラリと言って少しだけ微笑んだ先生。 僕はなんにも聞かされてはなかった。 きっと何処へ行くのかと尋ねてもまた曖昧にされるパターンだな。 そんな風に思って流れる空をなんとなしに見つめていた。 未だに不思議な感覚にとらわれる時がある。 先生と、なんの柵(シガラミ)もなしにこうやって一緒にいることが たまに不思議で仕方が無い。 元々は姉貴の旦那だった人が すったもんだの末、僕のいちばん近くにいる。 これは僕が望んだことなのにまだ信じられないことがあるんだ。 幸せすぎるからだろうな、と結局はノロケに落ち着くんだけど。 「ゴールデンゲートブリッジ……」 青の濃い水色の空に今日も赤が映えていた。ちょうど右手に見えたそこを暫く走って到着したのはベイカービーチだった。 あまり大きなビーチではないものの夕方になると雄大な景色と建造物が醸す雰囲気は素晴らしい。 勿論、昼間でも然りだけど。 「降りて、和泉」 相変わらずサラリと流すように言って先生は先に車を降りる。 僕もそこに続くのは当然だった。
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