第3章

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僕にとって姉貴という存在はどうでもいい、または、鬱陶しいそれでしかなかった。 何だかんだとダシに使われ、いいように走らされ、姉貴の失態が明るみに出ても、結婚して何年もたった今でも、自由に飛び回る姉は 今の僕からしてみれば恨み、の対象でしかない。 勿論第一の理由は 義兄さんの事だ。 今まで何億回と思ってきた。口には出さずに。 「なんで、姉貴の旦那なんだ……」 風呂上がり、火照った身体を冷ます為にあまり開ける事のない部屋の窓を開けた。 僕が義理の兄である、松岡先生と関係を持ったのはもうどれくらい前になる?1年と半年……初めてのキスから1年程経ってからの事だ。 それから 先生への想いは限りなく強くなり 果てしなく深くなる。 かねてからの希望通り、有機化学の研究室に席を置く事ができ、要するに大学院1年目を迎えている僕は、先生に一番近い席をゲットしている……筈なのに やっぱり、夫婦、という絆を超える事は出来ないんだろうか。 先生は姉貴の不倫をもう、最初から知っていると言った。それを聞いて僕は目が真ん丸になるほど驚いたもんだ。 知っていながら婚姻の関係を続けているなんて…… 「やっぱり、大人の考えている事は分からない……」 はぁ、と溜め息がまた出て、あぁ、シノさんに怒られる、と思った矢先、部屋の扉がノックされた。
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