余談

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生物分類学上のサケ・マスの分類は、他種同様専ら生育域や生態、またその圏内で生活する人間の文化に依拠して始まり、近年生化学(即ち遺伝子研究)に基づく精密なものに至った。結果的に現在では「某サケ」・「某マス」の呼称を有する魚類は全て、サケ目サケ科の諸種に当て嵌められる。即ち、呼称の如何に関わらず全てを「サケ」と見做すことが、少なくとも学術的には可能なのである。 ところが、シートラウト(またレイクトラウト)とブラウントラウトやスティールヘッド(テツ)とニジマスをはじめサケ科諸種の一部には多型があり、それらは大分して降海(湖・沼)型と河川残留型となる。共に分類学上完全な同一種だが、前者は後者と比較するとその体長・体重の平均値が有意に大きく、形態が変化していることもまた稀ではない。これが災いし、別種として認識され名称が与えられた可能性はあろう。日本でも、ベニザケ(oncorhynchus属nerka種)とその河川湖沼残留型であるヒメマス(姫鱒、学名同じ)、サクラマス(oncorhynchus属massou種massou亜種、つまり和名の鱒そのもの)と残留型のヤマメ(山女、学名同じ)、サツキマス(oncorhynchus属massou種ishikawae亜種、つまり石川鱒)と残留型のアマゴ(甘子、学名同じ)等、幾つかが古くから知られている。 これら一般通俗的呼称は、学術的分類・命名同様生態や圏内の人間文化から想定され、さらに一層生活文化に依拠した上で確立してきた、と考えられる。だがそれ故に、浸透した俗称は多分に錯綜したものとなっているようだ。学術的定義・分類と通俗的認識・呼称とは乖離こそしていないが関連は複雑、といったところが実情か。 とまれ、これらを総じて敢えて簡明に結論づけるならば、サケ(鮭・salmon)とマス(鱒・trout)は事実上ほぼ同じもの、と解釈して好かろう。 (未完、続稿鋭意執筆中)
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