第一章

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世界が、消えて行く。 人も、街も、山も、海も、全てが消えて行く。 『無』へと、変わっていく。 「また、ダメか... ... 」 俺は自嘲気味に言葉を紡ぐも、タイムリミットが刻々と迫るこの世界の誰の耳にも届かない。 何をしても、何を叫んでも、全てが世界の消滅と共に消え失せる。 もう、何度目だろう。この光景を目に焼き付けるのは。 繰り返す度に、自分の中の何かが失われていく。 あるいは、とっくに無くなっているのかもしれない。 俺の心は、乾ききっている。 「疲れたよ... ... ... もう... 」 止めたい。 という言葉は声に出なかった。 なぜなら、 『ありがとう、ミーちゃん』 ほら、まただ。 いつも君が邪魔をする。 君の笑顔が、俺を必死に食い止める。 理性を保たせ、俺をこの無限地獄に縛り付ける。 後一回、もう一回だけと、麻薬のように囁く。 俺の心に一滴の潤いを与える。 「分かってるよ、... ... 紅葉(モミジ)」 さあ、終わりだ。そして、始まりだ。 ここに世界があったのかと疑わしいほど何もない『無』をぐるっと見回し、大きく深呼吸する。 「全ては君のために... 」 君の愛したこの世界は、俺が守るよ。 刹那、世界は男と共に、消えた。
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