第二章

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だが不覚にもこいつの言う通り、引き留めるつもりはなかった。 何も吐かないのを分かっていての時間の浪費など愚の骨頂だ。 「おい、立てるか」 いまだびくともしない部下を担ぎ上げ、もう一人には肩を貸すと、改めてこちらを振り返る。 「では、近いうちに佐原冬瑠を迎えに来る」 それだけ言い残すと、ゆっくりとその場をあとにした。 「二度と来るな」 吐き捨てるようにして奴らの背中にぶつけると、俺も逆方向へと歩き出す。 『厄災』の真実、か。 それがどんなものであろうと、冬瑠を渡す気はさらさらない。 俺には冬瑠が必要なのだ。 と、張りつめた糸がプツリと切れるように急に疲労感が出てきた。 「... 今日は疲れた」 短時間に色々なことがありすぎた。 今思えば、あれだけ敵が弱かったなら冬瑠に能力を使わせなくても良かったんじゃないか。 無駄に消耗させてしまった。悪いことをしたな。 帰ったらめいっぱい甘やかしてやろう。ああ。その前に質問攻めか。 あいつの困惑した表情が目に浮かぶようだ。 そんなことを考えつつも一抹の不安を覚えながら、帰るべき家を目指す。 このなんとも言えない胸の疼きは嵐の予兆かもしれない。 アパートまでの道はやけに遠かった。
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