第三章

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「結構人がいますね」 「そうだな」 日曜日。 俺と冬瑠は遠くの大手デパートに買い物に来ていた。 と言うのも、先日あんなことがあったばかりで気分転換にと俺が連れ出した。 いや、実際俺のほうが気晴らしを求めていたのだ。 あれ以来男達の姿は一度も見ていない。 やはり次会うときは迎えとやらに来るときだろう。 どうしてもそのことが気にかかって頭から離れない。 「あっ、お兄様!あっちに新発売のゲームがあります!見てきていいですかっ」 「ああ。俺は文房具を見に行く。見終わったらそっちに行くから待っていろ」 「はいっ」 「あんまりはしゃぎすぎるなよ」 「わかってます~!」 休日だからか客が多い。 勢いよく駆け出して行った冬瑠は人込みに呑まれすぐに視界から外れた。 「... ... ... ... 」 しばらく冬瑠の消えた辺りをぼんやりと見つめる。 おそらく冬瑠は俺に気を遣っている。 このところぼーっとしていることが多かった自覚はあった。 冬瑠は意外にも人の心情に聡い。
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