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「貴方は私の肩書きが欲しいだけなのでしょう。ただ自己満足に陥りたいだけ。
... ... ああ、失礼。少々言い過ぎましたか?」
クスクスと嘲笑う俺を前に、みるみるうちに顔を真っ赤にしていく。
気付けば、自然と袖から手は離れていた。
全くいい気味だ。
俺の内面を覆う壁はどこまでも高いと言うのに。
踏み込もうとするほうが悪い。
「ちょ、ちょっと顔がいいからって、調子に乗らないでよね!」
「貴方こそ。私の名前すら知らないくせに媚を売らないでいただきたい。まあ、もう二度と会うことは無いでしょうが」
「くっ... ... ... !もういい!!」
とっくに猫被りがとれた態度で俺を一睨みすると、ブツブツ文句を垂らしながら足早に去っていった。
「... ただ自己満足に陥りたいだけ、か」
完全に姿が見えなくなると、己が投げかけた言葉を反復する。
俺は俺という存在が最も嫌いだ。
だからこうやって、表面的に装って真意を隠している。
俺の醜い部分も一緒に。
そのことにどこか安堵してしまうのだ。
これもある種の自己満足だと言うのに、
「最低だな、俺は... 」
人のことを言えた義理ではないのは百も承知だ。
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