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◇◆◇
「冬瑠、冬瑠... っ!」
悲鳴が縦横無尽に飛び交う中、俺は未だに冬瑠を探し続けていた。
『厄災』という事実が公(オオヤケ)になり、より一層混乱が増した気がする。
無理もない。
過去のケースから考えて、最悪の事態が容易に想定されるのだから。
「... お兄様!」
「冬瑠か!?」
微かに俺を呼ぶ声が聞き取られ、とっさに辺りをぐるりと見回す。
良かった。
ごった返す人の渦の少し外れた所から、冬瑠が駆け寄ってくるのが確認できた。
俺の方からも冬瑠の元に足を運ぶ。
冬瑠の身長からして、こんな人混みに紛れられてはさすがに判別がつかなくなってしまう。
俺達は取り敢えず脇に逸れた。
「大丈夫か?怪我はないか?」
「はい、なんとか... ... 。お兄様、これが... 」
「『厄災』、だろうな」
テレビでは何度か見たが、実際経験すると恐ろしい。
被害者が『まるで目に見えない巨人が暴れているようだった』と取材の受け答えをしていたのを思い出す。
まさにその通りだ。
襲撃でも受けない限り、こんな風に建物が破壊されるはずが無い。
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