第三章

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閑散とした道で軽く加速をつける。 そのまま適当な速度になるのを見計らい跳躍し、一旦床から数mの位置で壁に足を着く。 膝を低く曲げ全体重を乗せると、斜め上に向かって鋭く足を突き放した。 まるで猿のように壁からより高い場所の壁へと飛び移って行く。 これはこのデパートのデザイン上できることだ。 各階から1階を見下ろせる2階からは床の所々を円型にくりぬいてある。 もちろん、落ちないようしっかり手すりや背丈ほどの透明の板が張り巡らされているが。 今、まさにその空間を駆け上がっているのだ。 「ひっ... ! 」 「あまり下は見ないほうがいい」 「は、はひっ!」 冬瑠はぎゅっと目を瞑って肩に踞(ウズクマ)る。 俺は構わずジグザグと壁を中継点として高く、高く跳び続ける。 「もうちょっとだ、頑張れ」 「は、はいっ!」 そして流れるままに最後の跳躍に入り、 「はあっ!」 勢いよく天井の穴から飛び出した。 太陽がギラギラと眩しい。 下を見渡せばもう建物のほぼ半分以上は崩壊していた。 俺はすぐ隣にある森林公園に着地することを決め、その方向に体重をおいて慣性の法則に従い自由落下する。
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