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柔らかくストンと地に足を着けば、ゆっくりと冬瑠を下ろした。
「怖かったか?」
「へ?いや、それはそうですけど... ... あの... 」
なぜか跳んでいる最中よりはるかに青ざめた顔をしてこちらを見ている。
いや、俺を透かしてもっと遠くを見つめているのか。
「どうした?何を... ... 」
「グオオオオオオオオオオオウウッ!!!」
唐突な、大地をも揺るがす呻き声によって俺の言葉は遮られた。
頬を冷や汗がつたう。
「お、お兄様... ... 後ろ... ... ... 」
今のでさらに泣きそうな表情になった冬瑠が指差すのは俺の後方。
あの呻き声が聞こえた方角。
そこに何かがいる。
俺は恐る恐るも、着実に後ろを振り向いて行く。
「まさか、あれが... ... 」
俺達が数分前まで時を過ごした場所。
もはや原型すら危ういその場所に、『怪物』はいた。
「あれが、『厄災』の真実... 」
目に見えない巨人という比喩表現は、本当の意味で正しかったのだ。
なぜならファンタジー世界にいるような、鋭い爪や牙を持ち、巨体10mを越えるまさに『怪物』が俺の、いや、俺達の目には映っているのだから。
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