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「そんなっ... ... ! 無理です!なら僕も一緒に... ! ! 」
「それはできない」
「どうして!?」
「そんなの決まっている」
それだけ言うと、俺は冬瑠の目線と合わせるため腰を屈め片膝をついた。
それから安心させるように柔らかく頭に手を置く。
「俺はお前を死なせたりしない。絶対に」
「お兄様... ... 」
『厄災』の真実を知っていると言ったあの男達は、もしかしたらアレが見えているのかもしれない。
だがあいつらに頼るなど俺のプライドが確実に許さない。
それならいっそ俺だけが犠牲になれば良いだけの話だ。
お前が不安になるようなことは何一つない。
「... ... 何を言っても、駄目、ですか?」
「ああ。けど心配するな。『化け物』の相手は『化け物』がすれば良いだけのことだ。それ以上に俺は... ... 」
本当にお前のことが大事なんだ。
「... ... ... ... ... っ」
この気持ちは伝わっただろうか。
ゆっくりと頭から手を離すと、冬瑠は俺を一度も振り返ることなく無言で駆けて行った。
冬瑠の体温だけが手に残る。
「すまない... 」
段々と小さくなる背中にそっと語りかけた。
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