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そのために、俺は『怪物』の風をも切り裂く攻撃を避けて行く。
ただひたすらに、ひたすらに。
俺の白い髪は絶え間なく揺れ続ける。
俺がほんの一秒でも触れたものは無差別に破壊されていった。
しかも慎重かつ範囲の拡大を防がなければならない。
なるべくこの公園内に抑えたいところだ。
頭と身体を同時に展開させて行く。
体力的にも精神的にも着実に疲労が募るばかりだ。
「くっ... ... ... ! 」
そんな苦労も知らず、研ぎ澄まされた刃の斬撃は一向に収まる気配はない。
木は乱雑に殴り倒され、芝生は抉り取られる。
正直辛い。
もうどれくらい時間がたったのかなど分からなかった。
それほど同じ動作の繰り返しは苦なのだ。
「はぁっ、はぁっ... ... ... 」
しかし時の経過は体の変化でくっきりと目に見えている。
呼吸は荒くなり、スピードが落ちた。
さらに避ける所作にも余裕がなくなりつつあった。
... そろそろ限界、か。
俺にもそれが存在することが今日初めて証明される。
永遠とも思われた時間にも、もはや終わりが見え始めていた。
「... ... ... ... っ!」
不意にぱっくりと割れた地面に足を取られ、次の攻撃回避への姿勢が憚(ハバカ)られる。
すぐに体勢を立て直し体を仰け反らせるも、光る爪の尖った先端部分が俺の胸元のラインをかすった。
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