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「本当はお前、俺のこと嫌いだろう?」
突然の相原の言葉に、真壁は正直驚いた。こんなに四六時中つるんでいて、重く感じないなんてコイツ位だとシミジミと思っていた矢先のことである。どうして急にそんな事を言い出すのかとこっちが質問したい位だ。きっとまた気まぐれに思考が思い至った結果に違いないが、難儀な展開に発展することを恐れ、真壁はすぐさま返答した。
「イイエ、大好キデス」
「うっわ、すげぇ棒読み。しかもキショイし!」
「あぁ?」
思わず雑誌に向けていた顔を上げて、机の上にドッカリと腰を下ろした相原を睨む。自分から尋ねてきて、なんと言う言い草なのだろう。無性に腹がたった。
「じゃあ、嫌い。これで満足?」
「満足・・・な訳ねぇだろ。・・・でも、否定されると困るんだよ」
「え、なんで?」
問いただした真壁に相原は物凄い勢いで近づき、グイっと肩を引いた。そして、彼の聴いていたiphoneの音量をMAXにすると、何やら耳元で囁いた。聞こえるようで聞こえない言葉。
途切れ途切れ断片になった文字達を、真壁は正確に捉えることができなかった。
「くすぐったい」
ほとんど反射神経で相原を横へ押しやると、真壁はイヤホンを勢いよくはずし、仏頂面で尋ねた。
「で、何が言いたかったわけ?音量最大にされると全然聞こえないんだけど・・・」
「どうでもイイ話」
切れ長の目を片方だけ細めて、相原はニヤリと笑った。
「あっそ」
それだけ呟くと真壁は再び雑誌に目を落とす。廊下の先、遠くの方で『雪だ、雪だ』という声が響いていた。
まだ、このままでいい。
音をたてずに降り積もる雪をほんのちょっと想像して、彼は自分の最も近くにいる存在に気付かれないよう、静かに微笑んだ。
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