まあ冬ですから

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 キンコンキンコンと、朦朧とする頭に玄関チャイムが鳴り響く。  てめえ近所迷惑だからやめろ、と言いたいのに玄関までが果てしなく遠い。  そんなに広いアパートであるはずはないのに。  ダンダンダンダン、と扉を叩く音もしはじめ、携帯も鳴りっぱなしだ。 「先生、生きてるなら返事しろー!!」  生きてる。  生きてるが高熱のため、まともに動けないのだ。  ようやく玄関まで這っていき、鍵をあけた。 「た、武さん!?」 「……ちょっと悪い……、私を助けろ」  出せたのは、掠れてがらがらの声だった。  将志の肩を借り、どうにか布団に戻る。 「病院は……、行ってきたんですね」  額に将志の手が置かれ、安心したのか、急に涙があふれてこぼれ落ちそうになる。  将志は、枕元に置いたままだった薬袋をよく読んでいる。 「ごめ……、」 「頓服は食後だな、飯は?」  ふるふる、と首を横にふる。それだけで、めまいがした。 「お粥でいい? 食べたいものあったらそのほうがいいけど」  おかゆ、と唇を動かす。 「……ん、待ってて。台所借りるよ」
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