まあ冬ですから

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 くす、と将志が笑う。 「腐女子が数人さあ、帰りに俺を付けてきたんだ。で、わざと走って電車乗ったり降りたりして遠回りしたから時間かかった。探偵に追われてる気分だったよ」 「まあ……、腐女子は敵ではないけど……在学中はバレるとまずい」 「心得てます」  空になった茶碗を突きだすと、将志が嬉しそうに微笑む。 「おかわり?」 「……ん」  熱のせいで味がよくわからないのが悔しいけど、食べはじめると食欲がでてきた。 「この様子だと、薬飲んで寝てれば大丈夫そうですね」  白湯と、薬もスタンバイされている。  将志は薬の説明書まで熟読している。 「ジェネリックですね……」 「特許切れてるやつ?」 「うん、効き目成分は違わないみたい。あなたの口に入れるものだから気になるな……」 「国が推奨してるからな」  空になった茶碗をお盆に置き、レンゲも置いて手を合わせる。 「ごちそうさま?」 「……ん」  薬を手のひらに乗せ、白湯の入った湯飲みを渡してくれる。 「……いつもすまないねえ将子、げほげほ」 「それは言わない約束でしょ? おとっつぁん」 「いい娘に育ってー……、お前は嫁にやらないぞー……」 「はいはい。ちょっと元気出たみたいですね」
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