約束の甘さを

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 こんばんは、とアパートに現れた将志は、国語教師の目の前で堂々と提出課題を繰り広げている。  まあ……、かく言う私も別の机とはいえ堂々と漢字の小テストを作成しているのだからどっこいどっこいだが。  もはや、私たちに会話はない。 『ちゃぶ台貸して』 『どうぞ』  から何の言葉も発していない二人だ。  沈黙が不快にならず、いても気にならない。  いや、むしろ……いないほうが不快で気になるのかもしれないけれど。 「先生」 「ん?」 「この数式わからない」 「紫式部ならわかる」  ですよね、と自分流に納得してため息をついている。  じゃあ訊くな、と言いたかったが、その吐息が奇妙に、甘く感じた。 「……なんか甘いもん食ってる?」
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