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アパートの和室、いつものちゃぶ台の上に、武さんに、と将志はお土産を差し出した。
「……え?」
「そんな思いっきり不可解な顔やめてください」
「だって、同じ場所に同じ日程で行って帰ってきたんだぞ、お土産とか……なんだそれ」
「ええとね、スルメイカ。武さんビール飲む人だから」
別にお土産の内容を訊いたわけではないんだが。
「……近所でも売ってますよ」
「安かったから!」
まあそりゃ、ドライバーの休憩所でもあったわけだから、スルメイカもあるだろうけど。
「特産品みたいなのでは、ないんだ」
「武さんは俺に何か買おうみたいな発想はしなかった?」
「しなかった。自分用のでよければ、やる」
「……キーホルダー?」
「たまたま壊れたから、新しいのが必要で」
「じゃあ俺にプレゼントさせてください!」
「近所のキーホルダーを?」
「……そうですね」
やっぱり返せ、とキーホルダーを奪い取った。
「あー!」
大皿にスルメイカを広げ、缶ビールとビールに似たお子様飲料缶を差し出す。
「君は気分だけな」
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