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経済的に、と言われたら担任に打つ手はない。
仕方のないことだ。
私より、本人や友達のほうが別れはつらいだろう。
教師にとって生徒は皆、いずれ卒業する、それがちょっと早くなっただけのことだ。
アパートに帰り、派手に畳に寝転がる。
メールの着信に気づいた。
『副担任と、何の話?』
初男からだった。
『クラスの子の事情です』
『先生の仕事に俺は入れないもんな……』
おや、と思う。
同じようなことを、私も思っていたから。
メールが面倒になり、電話をかけた。
「ちょっと寂しい気持ちになってます、何か言え」
『はあ?』
意味わかんねえ、と笑っている。
「今日、忘れものでもしたの? 何か借りてるみたいだった」
『国語辞典』
「……おい、コラ」
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