名前を呼んで

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『見てたんだ? 俺を』 「……気には、なるよ」 『寂しいなら、そっち行くけど?』 「そういう寂しさじゃないから」 『中原、転校するんだって?』 「な……んで」 『うちのクラスにいる中原の友達から聞いた。先生が担任してるし、寂しいのはそのせいだろ?』 「……うん。本人はもっと寂しいだろうにね」 『先生だって、寂しいのは同じじゃん』 「……優しいね」 『そっち行くよ、泊めて』 「それは……」 『いいよな?』  有無を言わせず、通話が切れていた。  それなのに、玄関の鍵を開けて待ってしまう自分に、ため息をつく。  到着した初男は、リュックを背負っていた。 「お泊まりセットと、ついでに宿題持ってきた」 「真面目だね」  どうぞ、と招き入れる。
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