名前を呼んで

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 もし、結婚したら日常となりそうな風景だったからだ。 「将志……」 「……え」  なんだ、この感じ。 「む、向こうで待ってるよ」  相手は生徒だぞ。しかも、卒業したら別れる約束の。  望むなんて、あり得ないだろ。  私を卒業しない生徒はいない。  なのに初男だけは、そばにいてほしいなんて。 「おおー!! 武さん武さん武さん!!」 「……連呼するな、何事だ」 「成功したー!!」 「……おめでとう」  望んでしまった。  君がそばにいる未来を。  そのために私は、何をすればいいだろう。  将志が私のそばで暮らせるように、できることは何だろう。  それを考え続け、彼を支えて支えられて、生きてみたい。  小さなちゃぶ台に、オムライスがふたつ並べられた。  将志の、笑顔と一緒に。 ―おわり―
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