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積み荷に選んだ本にも、すっかり飽きてしまった。
王子は、というと、さっきから海ばかりを見ている。
「退屈ですか、マサシ王子」
声をかけても窓から視線が動かない。
完全に脱力しきっている。
「船で外遊って、こんな暇なんだな」
「何事も起きていない証拠ですから、私はありがたいですけどね」
「タケルは初めてじゃないみたいだな」
「……ええ、教育係としては見聞を広めておかないと」
「男と恋愛とかもしたんだろ?」
「しましたよ」
くるりとこちらを向いた。
「なのに王子は、ダメか?」
「……お戯れを」
二人の間で幾度となく繰り返された会話に、王子はまた、海に視線を戻した。
「……雲が出てきたな」
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