137人が本棚に入れています
本棚に追加
タケル、タケル、と叫ぶように呼び続ける声に、重いまぶたをあげた。
「タケル!」
「……マサシ王子?」
ここは……? と思う。白く、美しい砂浜が目に入る。
「タケルは俺を助けて、気を失ってたんだ。……よかった」
必死に海図を思い出す。あの海域に、こんな島があっただろうか。
「すみません、王子」
「なに謝ってるんだよ、助かったんだぞ、俺たち!」
命は助かったが、水も食糧もないのに、まだ本当の意味で助かったとは言えない。
動けるだろうか、と起きあがる。たどり着いた場所をよく見ると、歩いて一周できそうなくらい小さな島だ。
助けを呼ぼうにも、こんな環境に人が住んでいるはずはない。
王子は無邪気に喜んでいるが、服も髪もずぶ濡れのままだ。
「マサシ王子、濡れた服を乾かさないと体温を奪われます。あと、日が暮れるまでに飲み水と」
「聞かせてくれ、タケル。俺ではダメか?」
こんな時に、という苛立ちを抑える。
「……飲み水と食糧と、寝床を確保します」
「答えろよ」
最初のコメントを投稿しよう!