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そんなはずはない。
鍛えていないので目立った筋肉もないのに、なにを指して言ったのか。
「そんな暇があったら!」
「言えなくなる前に、言っておきたい」
それは、この島での最悪の事態を覚悟した発言なのだろうか。
思い残すことのないように。
そんな悲しい結末を考える前に、マサシ王子を無事に国へ帰すためにできることは何でもやらなければ。
「言えなくはしませんから」
そっか、と薄く笑う。
「タケルは……俺が嫌いか?」
「嫌いな人に仕えるほど酔狂ではありません」
「好きか?」
うやむやに誤魔化したところで、時間を無駄にするだけだと悟る。
「好きですよ愛してます最高に誰よりも。だから水を探しに行かせて下さいね」
感情を含ませず、書かれた文字を読みあげるように淡々と告げた。
え……、と固まったマサシ王子をさっさと見捨てて島の中に踏み入る。
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